Google Apps For Businessの「使いづらさ」を解決する手段 − TechTargetジャパン 情報系アプリケーション
無償版、アカデミック版、ビジネス版の違い
Google Appsでは、アカデミック版(教育機関向け)を「Google Apps for Education」、ビジネス版を「Google Apps for Business」と呼んでいる。それぞれの違いを要約すると、機能やサービスレベルについては「無償版<アカデミック版=ビジネス版」、メールボックス容量と費用については「無償版=アカデミック版<ビジネス版」となる。
しかし、2011年6月28日にGoogle Apps公式ブログでGoogle Apps for Educationのメールボックスも7Gバイトから25Gバイトに順次拡張していくと発表があった。GoogleビデオとGoogleサイトの容量はアカデミック版の方が大きかったこともあり(ただし、拡張するための有料オプションはない)、アカデミック版の唯一といっていい懸念は払拭されたと考えられる。
とはいえ、細かい機能については、まだビジネス版が先を行っているところがある。例えば、メールの開封確認機能は無償版とアカデミック版は未対応である。社内のLDAPやActive DirectoryとGoogle AppsのIDや組織構造(OU)を同期させる「Google Apps Directory Sync」というツールも、無償版では利用できない。また、当然のことながらアカデミック版は教育機関でなければ利用できない。利用には「.edu」などの教育機関ドメインを保持しているなどの条件がある。やはり企業で使うのであれば、ビジネス版であるGoogle Apps for Businessを選ぶのが賢明だろう。
Google Appsは多機能だが、ちょっと使いづらい
Google Appsに限らず、Salesforce CRMなどの著名なSaaSは、総じて多機能である。しかも、機能は日々追加されてますます多機能になっていく。これはこれで良いことだが、一方でPCの操作に不慣れな人々にとって、多くの機能に埋もれてしまい必要な機能が探しにくく、結果使いにくい状況になってしまうケースが残念ながら存在する。いくら多機能だとしても、使いにくいインタフェースは人々の活用意欲を削ぎ、逆に生産性を低下させてしまう。また、在宅勤務やリモートオフィスといった働き方の多様性を迅速に実現したいといったケースにおいては、利用トレーニングに時間がかかっていては本末転倒であり、クラウドの特徴を生かしきれないと筆者は考えている。
例えばグループビューのカレンダーやワークフロー
前回でも言及したが、Googleカレンダーにはグループビューがない。個人が中心で、たまに他人のスケジュールを確認する程度であれば不自由はないが、組織で活動することが多い日本企業においては、やはり使いやすいインタフェースとは言い難いだろう。
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日本におけるグループウェアの定番機能であるワークフローも、Google Appsの標準単体機能としては存在せず、Google Apps Scriptで開発するイメージになる。もちろん、旧来の開発作業と比べれば圧倒的に簡単な操作で開発でき、一昔前のVisual Basicで開発していたような画面を簡単にWebブラウザだけで開発できるという点については、感動すら覚える。しかし、ユーザーにとって使いやすいインタフェースに到達できているかというと、なかなか悩ましい。
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他にも他社製グループウェアに比べて機能面で劣る部分は幾つか存在する。そのあたりは販売代理店やソリューションパートナーが提供しているさまざまな拡張製品やサポートと組み合わせて対策していくという選択肢もある。ネックになっている使いづらさを解消することで手離れが早く、結果導入コストを低減させ、さらに自社におけるGoogle Apps利用の定着率向上を実現することができるだろう。使いやすさは業務における生産性向上の重要なキーワードである。
Google Appsは代理店からも購入できる
Google Apps for Businessは、GoogleのWebサイトからクレジットカード決済で購入できる(購入する前に、30日の無料トライアルから始めることができる)。しかし、やはり日本企業においては、請求書ベースの支払いが可能な代理店からの購入というルートが一般的だろう。Googleは、国内では販売代理店とソリューションパートナーの2種類のパートナー制度を展開している。
販売代理店はその名の通り、Google Appsのライセンスを販売する代理店だ。250以下のライセンス販売に限られる中小規模企業向け代理店と、ライセンス数の制限がない大中規模企業向け代理店の2種類がある。
一方、ソリューションパートナーはGoogle Apps for Businessのライセンスを販売するだけでなく、周辺の拡張機能を提供していたり、拡張サポートを提供している代理店である。ソリューションパートナーが提供しているメニューは多種多様だ。
代理店やソリューションパートナーからの購入はお得?
Gmailの導入によってスパムフィルタやメールサーバでのウイルスチェックの外付けが不要になるだけでも、かなりのコストメリットを得ることはできるが、代理店からライセンスを購入することで特典が付くケースも多い。例えば、スマートフォンとセットで購入することで、実質的にGoogle Appsのライセンスが割引になったり、拡張製品とセットで購入することでパック割引になったりする。特に円高の今は、こういったお得な買い方をするチャンスでもある。
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Google Apps拡張製品同士を組み合わせることも可能
こういった拡張製品を賢く使うことが、Google Apps for Businessを使いこなすための1つのポイントだが、「Google Apps購入の代理店と拡張製品は必ずセットで考えなければならないのか」という疑問を持つ方もいるだろう。
結論からいうと、複数社のGoogle Apps拡張製品を組み合わせて共存させることも可能である。例えば、Google Apps for Business本体は販売代理店であるA社、シングルサインオンの拡張はB社、ワークフローの拡張はC社、といった組み合わせが可能である(全ての組み合わせが可能というわけではないので、個別にはパートナー各社に確認していただきたい)。クラウドも「ベストオブブリード」で最適な組み合わせを選択できる時代になったということである。
代理店から購入することの意味
Google Apps for Businessは、直接Googleから購入しても代理店から購入しても大差ないと思うかもしれないが、代理店から購入すると1つ大きなメリットがある。それは、「代理店ツール」を使って、代理店が顧客のGoogle Appsの管理者画面にアクセスできるのである。
これは何がうれしいかというと、面倒な初期設定や日々の設定などの作業代行を、代理店に依頼できるということである。例えば、パスワードリセットなどの作業についても、代理店ツールを使うことで代理店が代行できる。ただ、こういったサービスは代理店やソリューションパートナー固有の拡張サポートである。こういった拡張サポートを提供しているかどうか、有償なのか無償なのかは、各社によって異なる。
サポートは自社のユーザーレベルに合わせて選ぶ
他にも、Google Appsの設定手順や使い方を、工夫を凝らした資料や動画で提供している代理店も多い。会員登録すると独自のノウハウを教えてくれるWebサイトや、読者を限定せずとも自社のノウハウを公開しているWebサイト、Googleが公開しているYouTubeを見やすく整理しているサイトなど、さまざまある。無料公開の動画やテンプレートを使って、自力で導入していく力のある企業であれば、こういった「DIY型」の導入サポートで十分かもしれない。
しかし、数百人規模のユーザーを抱える企業では、リテラシーレベルに幅がある場合が多く、使いやすい既製品を組み合わせる「レディメイド型」を好む傾向があると筆者は感じている。Google Appsのようなグループウェアは、導入後にできるだけ多くの人が利用し、使い込むことで価値が上がっていく。自社のユーザータイプに合わせて、サポートも最適なものを選択していくべきである。
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Google Apps拡張サポートのメニュー例
Google自身も当然各種のサポート情報を提供している。「Google Apps ステータスダッシュボード」やGoogle Apps公式ブログなどだ。また、「ディスカッション」に投稿すると答えてもらえることも多い。とはいえ、やはり代理店の拡張サポートは充実している。
代理店の拡張サポートのメニュー例
- Google Apps活用テンプレートの公開
- 無料/有料活用セミナー、コンサルティング
- 初期導入支援
- 無料問い合わせ(メール、Webなど)、有料問い合わせ(電話、オンサイトなど)
- メールマガジン(メンテナンス情報や新しい機能のタイムリーな提供)
- 障害情報ステータスダッシュボード
- 24時間365日の窓口を開設している代理店も
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エンドポイントセキュリティに注力する時代の終息
代理店やソリューションパートナーが提供するGoogle Apps拡張の主要カテゴリに、「セキュリティ」がある。これらのセキュリティ拡張は、クラウド上のデータアクセスにかかわるものが多い。クラウドサービスに付加するサービスなので、当然といえば当然だが、要は大切なデータは全てクラウドに置き、その出し入れそのものを強化する。これまでのPC管理のように末端のデバイスをガチガチのセキュリティで固めるより、データを集中管理してデバイスの多様性とうまく折り合いを付けていこう、ということである。
エンドポイントである端末が多様化する中、このような方向性は歓迎すべきであると筆者は考えている。2011年の春ごろに世間を騒がせたPlayStaion Network(PSN)の情報漏えいの件は、「接続してくるデバイスが自社管理下の端末だけである」という、誤った前提でのセキュリティ対策に偏っていたことが原因の1つといわれている(関連記事:共通点・傾向は? 2011年上期の情報漏えい企業に起きたこと)。データと機能は全てクラウドにあり、利用者は自分が使いやすいデバイスを使ってそれらのデータや機能を使うことができる、という方向性にGoogle Appsは間違いなく進んでいる。
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iPadなどのスマートデバイス対応
Google Apps for Businessも当然のように、スマートフォンや各種タブレットデバイスに対応している。Googleが提唱する「『100%Web』の世界」によると、20世紀から続くPCからクラウドを利用するケースはもはや主流ではなくなり、スマートフォンやタブレットデバイス、Chromebookなどのライトウェイトで直観的な操作ができるデバイスからの利用が当たり前になってくるという。こうしたデバイスの多様性に対しては、セキュリティの観点だけでなく、ユーザー視点での使いやすさがとても重要である。代理店やソリューションパートナーが提供している拡張機能についても、こういった流れに対応できているかどうか、確認しておいた方がよい。
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IPv6対応は大丈夫か?
IPv6対応機能となると、代理店やソリューションパートナーでできることは限られてくるが、少なくともGoogle Apps拡張製品がIPv6に対応しているか、対応のロードマップがあるかどうかは意識しておく必要がある。Googleの各種サービスはIPv6環境からも問題なく利用可能で、自社環境をチェックしたい場合は確認サイトにアクセスすればよい。
飛鋪武史(ひしきたけし)
日本技芸 取締役 ビジネスサービス事業部長
青山学院大学理工学部卒業後、富士総合研究所(現みずほ情報総研)、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、ガートナージャパンを経て、日本技芸に入社。製造業、通信業、金融業、官公庁などさまざまな業界で多数のITグランドデザイン、ITコスト削減、プロジェクトマネジメント、情報分析・可視化・指標化などのコンサルティングを手掛けるとともに、ワークプレースやコラボレーションに関する数々の調査プロジェクトの経験を持つ。それまでの経験を生かし、人がITを使いこなし、真の生産性向上を図るためのインタラクティブデザインにフォーカスした「rakumo」シリーズの事業責任者を務める。
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