[フィードバック(feedback)2:カウンセリング・心理療法にも応用されているフィードバックの技法]
フィードバック(feedback)2:カウンセリング・心理療法にも応用されているフィードバックの技法
この項目は、[前回の記事]の続きになります。臨床心理学やカウンセリング(心理療法)の分野では、クライエントの行動・症状やその変化をクライエントに分かりやすく示して、『気づき・自己洞察・自己理解』を促すことがフィードバックと呼ばれている。具体的には、クライエントの行動・症状が分かる資料やデータをクライエントに与えることだったり、周囲の人がクライエントをどのように見ているか(評価しているか)が伝わる情報を与えることだったりするが、このフィードバックによって心的変容(人格変容)を促す技法はA.アイビィのマイクロカウンセリングでも重視されている。
カウンセリング(心理療法)において、もっとも客観的あるいは効果的で適切なフィードバックを与えるためには、『カウンセリング過程のやり取りの記録』が必要であり、そのためにボイスレコーダーやデジタルビデオが用いられることもある。
昔はクライエント中心療法(来談者中心療法)のカール・ロジャーズが、テープレコーダーを用いてカウンセリングのセッションの内容を記録していたが、C.ロジャーズは必ずしもクライエントに聞かせるためにカウンセリングを録音したわけではない。カール・ロジャーズのテープレコーダーによるカウンセリング内容の録音は、『カウンセラー間のスーパービジョン(相互学習のワークショップ・研究会)』のためのものであり、ここで説明しているフィードバックの目的とは異なっていた。
カウンセリングや心理療法で実施されることのある『フィードバック(クライエントへ客観的情報・主観的感想を与える行為』の意味は以下の2つに整理されるが、もっとも強力とされるカウンセリング上のフィードバックは『カウンセラーがクライエントのことをどう見ているか、どう評価しているか』を伝えることである。しかし、カウンセラーの主観的感想や意見に基づくフィードバックには『転移感情による副作用』の可能性もあるので、カウンセリングや精神分析のセッションにおける知識と経験を十分に持っているカウンセラーがそのフィードバックを行うべきで、安易なフィードバックは逆に現在の症状や心理状態を悪化させる恐れもある。
1.クライエントの『気分・意欲・自己評価』を高めたり、適応能力を引き上げたりするような結果につながるフィードバック(自己理解を深められる情報提供)。
2.クライエントが喜んだり嬉しがったりする『クライエントが望んでいる内容・評価』を提供するような形のフィードバック(必ずしも良い治療結果につながるわけではないがその場での自己肯定感を高めることができる)。
エリック・バーンの交流分析のカウンセリングとも関係する『一般的なフィードバックの意味』としては、クライエントを肯定したり賞賛したりする態度・発言を『正のフィードバック』、クライエントを否定したり批判したりする態度・発言を『負のフィードバック』ということもあるが、こういった考え方にはフィードバック本来の『円環性・結果が原因に影響を与える図式』が組み込まれていないという問題が指摘される。そのため、交流分析ではクライエントに肯定的な態度・発言を『正のストローク』と呼び、クライエントに否定的な態度・発言を『負のストローク』と呼んでいて、フィードバックとは別の概念で表現するようになっている。
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